Kidzacare Saga

医療法人天心堂志田病院 小規模多機能ホームくすの木 介護福祉士 首藤貴信さん

Q.子どものころ「介護の仕事」というとどんなイメージを持っていましたか

私自身は、家での介護というものをした経験はなかったのですが、母と祖母が病院で働いていて、小さい頃はよく職場に遊びに行っていました。母が高齢者の方と楽しそうに話をしたり、みんなの前で体操やレクリーションをやったりするのを見ていたので、今思うとぼんやりですが、それが介護の仕事のイメージですね。今の小中学生のみなさんのほうが、介護の仕事についてもっと具体的なイメージをもっているかもしれません。

Q.なぜこの仕事を選びましたか

祖母や母が働いている様子をそばで見ていたので、「人に寄り添うことを将来の仕事としてやっていきたいな」という思いは、自然と子どものころからあったのかもしれません。高校を決める時、母と祖母に「二人が働いているところをそばで見たきっかけで介護の道に進もうかな」と言うと、二人ともとても喜んでくれました。
それから地元の嬉野高校の社会福祉系列に入学し、介護について学び始めました。実習で介護施設に行ったときに、自分が関わった利用者さんがだんだん素敵な笑顔になられるのを見て、「あっ。自分の一番いいところをいかすことができている、介護ってこんなにも人を笑顔にできる仕事なんだ」と実感したんです。もともと人と話すのが好きで、小さい頃から人見知りせず、誰にでもどんどん話しかけるタイプだったので、それからはもうこの道で間違いない!と。高校卒業時に介護福祉士の国家資格を取得し、今の仕事についています。

Q.お仕事で印象に残ったエピソードを教えてください。

私のことをご自分の息子さんのように見てくださる利用者さんがいて、その方との関わりが一番印象に残っています。最初は「他人」だったんですよ。利用者さんも淡々とされていて。それが接していくうちに「あらっ。あんた息子に似とるね」と。それからコミュニケーションが広がり、他人だったのが「息子さん」になり、いつの間にか「彼氏」になり、最後は「旦那さん」まで昇格させていただきました(笑)。それでも、私自身は迷惑という気持ちは全くなくて。それだけ私の存在を受け入れてくださったんだなと思うと、むしろもっと寄り添っていこうと思いました。私はよく、裏表がないオープンな性格と言われますが、そんな私自身を利用者さんがそのままそっくり受け入れてくれるからこそ、利用者さん自身もオープンになって、安心して私に身を任せてくれるんだなと思っています。とてもありがたいことですね。

Q.今のお仕事の魅力をわかりやすく教えてください。

一言で伝えるなら「人を笑顔にできる」ということ。自分がなにか話すことで、相手が笑顔になって、その笑顔でまた自分も笑顔になって元気になれる。介護福祉士の仕事では、そんな関係を築けることがとてもやりがいに感じるんです。介護の魅力ってそういうところだと思います。利用者さんと接しているうちに、関わったぶんだけ、笑顔が増えて介護福祉士としても成長できます。人とのつながりの中で、互いに喜びあえる。たしかにきついこともあったりしますが、自分の中で振り返ってみると、「この仕事をやってよかった」と思う気持ちの方が大きいんです。自信をもってそう言えますね。

小中学生のみなさん、保護者のみなさんへ

介護に対して身体的にきついとか、勤務時間が長いとか、精神的にハードといった印象を持っている方が多いと思います。実は勤め先の近隣の小中高校にお願いをして、介護の仕事のイメージについてのアンケートを取らせていただきました。すると予想通りといいますか、介護に関するマイナスイメージは、小中高生のみなさんだけでなく、保護者さんや学校の先生方にも根強くあったんです。私は、このイメージを払しょくしたい、介護職の魅力をどんどん発信していこうと考えました。母校の嬉野高校で介護の仕事の魅力について講演を行った際、生徒さんの介護に対するイメージが前年度より改善したんです。うれしかったのと同時にこの結果から介護現場を知ってもらうことが本当に大事なんだなと感じました。できれば、小学生のうちから介護の仕事について実際に触れてほしいと思っています。医療職にくらべ介護職はまだ裏に隠れた存在ですが、みなさんが将来を考える時に「そういえば介護の仕事、面白そうだったな」と思い返すことにつながれば、と。介護職の人間が、自身の仕事の魅力をもっと発信していくべきだと思います。

取材を終えて

介護の仕事の魅力について発信する介護福祉士、首藤さん。介護業界全体の未来をみすえながら、自身の仕事に誇りをもって積極的に活動をされており、今秋、全国の学会で発表をする予定とのこと。気分転換は趣味の音楽のバンド、子どもと遊ぶこと。持ち前のコミュニケーション力とオープンな性格で利用者さんと接する首藤さんは、職場のムードメーカー。なくてはならない存在でしょう。首藤さんの職場には、理事長がドラムをたたく職員バンドがあり、イベントやお祭りで演奏を聞くことができるそうです。