Q.子どものころ「介護の仕事」というとどんなイメージを持っていましたか
誰かのお世話というか、「できないことをサポートする」といったイメージがありました。でも、働いてみて思うのは「できないこと」より、「できること」を今以上にどう伸ばせるかが大切なんですね。10m歩ける方が15m歩けるようになるには、とか。また、利用者の方が求められていることを、コミュニケーションでどう引き出して実現するか。こんな風にイメージと実際は全然違いましたね。
僕の場合、祖父母と早いうちに死別して、あまり接した記憶がないので、利用者の方と毎日関わりながら、自分の心の中に「おじいちゃん、おばあちゃんと接する時間があったらこういう感じだったのかな」と、祖父母の姿に少し重ね合わせてもいます。
Q.なぜこの仕事を選びましたか
高校卒業後に勤めた工場で、入社2週間後くらいの時に指を切断する事故にあいました。精神的、肉体的にもきつい状況だったんですが、一番近くで支えてくださったのが看護師をはじめとする福祉の方々でした。「後々仕事をするのであれば、人のためになることをしたい」と思ったのが始まりです。
人の心を動かすことに興味があり、路上で音楽ライブをしたり建築を勉強したりしていましたが、ある時、親族の方から福祉系の学校の話を聞きました。まずは資格を取って考えよう、と進路変更。そこで介護職が持つ温かさのようなものを感じて、自分に合っている、と確信しました。こちらに就職し、介護は自分の中での天職だなと思っています。
Q.お仕事で印象に残ったエピソードを教えてください。
勤め始めたばかりの頃、ずっと反応がない方にどうアプローチするか、考える時期がありまして。少しでも時間が空いたら挨拶や話しかけに行くようにしたんですが、その利用者の方から笑顔で話していただけるようになった時、自分の中でグッとくるものがありました。
まず、その方は何に興味があるのかと探って、食事が好きだと思い、お部屋に伺った時など話題に出すようにしました。「今日のメニューはこれです」とか、食べた後に「おいしかったですか?」「何が好きですか?」と質問したり。しばらくして「今日の献立は何ね?」などと答えてくださって。嬉しくてちょっと泣きそうになりました。一人でも多くの方を笑顔にしたいという目標があります。
Q.今のお仕事の魅力をわかりやすく教えてください。
利用者さんの笑顔を引き出せた時にやっぱり一番魅力を感じます。お部屋を後にする時、「じゃあ、また明日来ますね」「次はいつ来る?」などのやりとりが嬉しいです。積み重ねて、少しずつ信頼関係が築けているんじゃないかと。
仕事も、自分でも驚くほど楽しいです。自分がどうなりたいか、強い芯を持ち始めたからだと思います。将来は自分の施設を建てる夢があります。介護職が減っている中で、「どういう仕事?」「きついんじゃない?」という意見が多く、施設で働いている人しか分からない部分があり、僕はそうではないと思っているので、自分で施設を建てた時にリーダーとなって発信して、一人でも多くの方の人生を豊かにできたらと思っています。
取材を終えて
社会人を経験した後、介護福祉士の資格を取るために短期大学で学んだ中島さんは、施設側が「口説き落として」採用したというほど、熱心な学生さんだったようです。「自分の施設を経営する」という次なる目標があり、他の職員さんのやり方を観察して学ぶ、メンバーではない会議に加えさせてもらう、などと聞いた時、その意欲の高さには驚きました。先輩が「中島君の目から炎が見える」と話したこともあるとか。ポジティブに積極的に。施設から社会へ、福祉の魅力を発信してくれる存在として注目されています。