Kidzacare Saga

社会福祉法人聖母の騎士会 特別養護老人ホームロザリオの園 管理栄養士 池田香菜子さん
管理栄養士・池田香菜子さん

Q.子どものころ「介護の仕事」というとどんなイメージを持っていましたか

小さい頃は、祖母が介護施設に入っていましたが、「介護」という言葉やその意味については知らなかったと思います。高校生くらいになって、ようやく分かり始めたような気がします。
それと、大学生の夏休みの時に今勤めている施設に1週間だけ実習を受けに来たことがあって。そうやって、だんだんと介護の仕事を知る機会が増え、高齢者の方と接することが意外にも自分に合っていると思い始めました。

Q.なぜこの仕事を選びましたか

中学3年生の頃に、一時期ごはんが食べられなくなったことがあり、すごく痩せてしまったんです。その時に母が作ってくれる食事がおいしさだけでなく、栄養バランスも気遣ってくれていたことに気づき、また食べられるようになりました。高校では普通科に通いながら、家で母の手伝いをしているうちに料理が好きになり、自分でも作るようになって、今思えば栄養のことに関心を持ったタイミングなのかな、と思います。
福岡の大学に入ってからは、食事や栄養が病気の予防や回復に役立つこと、体にとって深い関わりを持つことに興味を持ちました。臨床栄養学などを学んで、勉強していて楽しかったことを覚えています。頑張れば4年間で管理栄養士の資格が取れるということで、絶対に取ろうと決めて勉強しました。取得できたときは嬉しいという気持ちよりも驚きが先でした。頑張ってよかったなと。

Q.お仕事で印象に残ったエピソードを教えてください。

施設に勤めている中で、たくさんの利用者の方との出会いや別れがあります。一人ひとりとのちょっとした会話や、皆さんの笑顔も印象に残っていて、どんな方にもそれぞれに思い入れがあります。
1週間の献立表を貼ったりするときに利用者さんの方から声をかけていただいたり、こちらから声をかけたりすることもあります。私たちが作る食事をおいしいと笑顔で言ってくださる時など、「ああ、よかったな、また頑張っていきたいな」と、ても励みになります。食事の味を薄めにしたり、ペースト状にしたり形態もさまざまで、利用者の方が毎日食事の提供を受けどう思うのか、いつも意識して仕事を続けています。

Q.今のお仕事の魅力をわかりやすく教えてください。

家庭的な味つけにしたり、調理方法や盛り付けを工夫したりすることで、利用者の方がおいしいと言ってくれる。そういう食事づくりの仕事に魅力を感じます。また、衛生や安全にも細かく気を配り、つまらせたりなど事故のないよう、確認しながら調理しています。「こういうものが食べたい」とおっしゃる方もいて、ご用意することも。食事がいかに楽しみであるかと実感します。
毎日100名分を超える食事を作るにあたり、厨房ではそれぞれのスタッフが協力し合い、やりがいや達成感もあります。安心してかつおいしく食べていただけるよう、調理の仕事を教えてくださった栄養士の方の姿勢を見て、私も同じように仕事をしていきたいと思っています。

取材を終えて

思春期の頃、食事の困難に直面し、家庭での料理の温かさに触れて再び食べることができるようになったという池田さん。お母さんの愛情への感謝が原点にあり、今の職場でも、食べる人のことを思いながら仕事をされていることが分かりました。調理の現場では、先輩からたくさんのことを学びながら、今の仕事に就いてもうすぐ(2022年2月)15年を迎えるそうです。どの質問にも終始しっかりと考えて答えていただく姿に、仕事やいろいろな場面にも真剣に向き合ってこられた様子がうかがえ、責任感の強さとパワフルな人柄を感じました。