Kidzacare Saga

社会福祉法人凌友会 きんりゅうケアセンター桂寿苑 作業療法士 多良弘典さん
作業療法士・多良弘典さん

Q.子どものころ「介護の仕事」というとどんなイメージを持っていましたか

曽祖母が介護施設にいた当時、初めて介護の仕事を見ました。ピンポンと呼び出し音を鳴らしたら、スタッフさんが「どうしましたか?」と心配しながらすぐに来てくれるんです。嫌な顔もせず笑顔で駆けつけてくれる様子に、「介護の職場って困った時には笑顔で助けてくれる、心の優しい人たちが働いているんだな」というイメージを持ちました。

Q.なぜこの仕事を選びましたか

小さい頃からかわいがってくれていた曽祖母が骨折で入院して、自宅での生活を諦めかけました。その後、介護老人保健施設に入り、そこで出会った作業療法士さんが曽祖母に一生懸命声をかけたり、祖父母たちが毎日面会して励ましたりして、本人も熱心にリハビリを行うようになって、「家に帰りたい」という願いが叶ったんです。一時的な外泊でしたが、その時の曽祖母の「やっぱり家はよかった」という嬉しそうな笑顔と涙が忘れられず、リハビリの仕事って何かしらその人のための力になって、夢を叶えるんだと気づきました。
このことがきっかけで、「たくさんの人が笑顔になる手助けができたら」と、作業療法士になることを決めました。

Q.お仕事で印象に残ったエピソードを教えてください。

手が思うように動かない方が、作品づくりを通してリハビリをしていくことがあります。以前、事故で手が不自由になった方と空き箱や折り紙などで小物入れを作る時、最初はうまくいかなかったんですが、少しずつ上手になって、いつの間にか自宅で作成されるまでになりました。
私一人ではなく、他の高齢者の方やスタッフを巻き込んで、「すごく上手」「素敵ですね」と声をかけて心をくすぐって。そうすると、だんだん笑顔になってやる気も出て、立派な引き出し付きのティッシュの箱を皆さんのために作られるようになったんです。ご本人の「これが私の生きがいになった」という一言はとても嬉しかったですね。

Q.今のお仕事の魅力をわかりやすく教えてください。

作業療法士の仕事は、心を元気にする、笑顔を生み出せる仕事だと思っています。病気やけがが原因で、今までできたことができなくなった方は自信をなくし、落ち込んでしまいます。他のスタッフと連携しながら、いろいろな作業を用いてリハビリを行うことで利用者の方の「できること」を増やし、自信を取り戻すお手伝いをするのが私たちの役目です。
また、作業療法士が活躍できる場はとても幅広いと感じます。例えば、私は認知症になっても住みやすい街について話し合う活動に関わっていました。施設にいらっしゃる方はもちろん、地域にお住まいの高齢者の方々や、社会全体のことまで多くの分野において必要とされ、とてもやりがいのある仕事だと思います。

取材を終えて

取材で施設に伺った際、利用者の方と一緒に作業に取り組まれていた多良さん。会話が弾み、みなさん素敵な笑顔でいらっしゃったのがとても印象的でした。
単にリハビリのお手伝いをするだけでなく、利用者の方の心をくすぐり、やる気と笑顔を生み出すその瞬間に、作業療法士というお仕事の魅力を感じました。
相手の気持ちに寄り添い、小さな気持ちの変化を見逃さず「ちょっとやってみようかな…」と、自信と安心感を与えてくれる多良さんの温かい人柄に触れた一日でした。