シルバーケア吉野ヶ里 管理栄養士 中島綾さん
Q.子どものころ「介護の仕事」というとどんなイメージを持っていましたか
一緒に住んでいた祖母は元気だったので介護とは無縁で、言葉そのものを知らなかった気がします。介護に触れたといえるのは、小学校低学年のとき。ボランティアで近くの特別養護老人ホームに行って歌を歌ったり、握手をしたりしました。そのときにおじいちゃん、おばあちゃんが涙を流して、喜んでくれたことを覚えています。ホームのお年寄りは祖母と違って、みんな車いすを使っていたので、それにはびっくりしました。
Q.なぜこの仕事を選びましたか
母親が料理上手で、料理を盛る器(うつわ)にもこだわっていたんですね。そんな母が作る料理を祖母がおいしそうに食べているのを見て、なんとなく「食べる」ことに関係した仕事につきたいなと思いました。いろいろ調べているうちに、「管理栄養士」という国家資格があることを知り、管理栄養士専攻の大学に進学しました。
当時、私が進学した大学では、管理栄養士専攻の中でも「臨床」「福祉」「運動」の3コースに分かれていました。小学生のときにボランティアに行った福祉施設の思い出や、祖母にも元気でいてほしいという思いから、車いすの使い方なども学ぶ「福祉」を選びました。また、管理栄養士の勉強は、調理実習から生化学まで幅広いですよ。
Q.普段、管理栄養士はどんな仕事をしていますか。
病院の管理栄養士の仕事は、病気を治すことを目的にした食事づくりです。私は食べることが好きなので、食事を「楽しむ」ことを重視したかったんです。揚げたての天ぷらを食べてもらったり、旬のものを食べて季節感をもってもらったり、楽しみを持ち続けて日々の生活にメリハリをつけて過ごしてほしいと思って、それで特別養護老人ホームの管理栄養士をしています。
日々の仕事は朝、介護福祉士や看護師、相談員の方々と食に関する情報を交換したり、入居者の状態にあったソフト食やムース食などの献立を作ったり、実際に食べている様子を見に行き栄養状態なども確認します。
Q.お仕事で印象に残ったエピソードを教えてください。
最近は、特別養護老人ホームで人生の最期を迎える方も多くなりました。管理栄養士は、介護福祉士や看護師と違って人生の最期にたずさわれないと思われますが、食べられなくなるその日までかかわっていきます。
ある入居者の男性が徐々に食べられなくなってきたころ、息子さんが「父はビールが好きでよく飲んでいたんですよ」という話を聞きました。本物のビールを飲んでもらうことは難しかったですが、介護士と看護師とも協力して考え、ゼリー状にしたビールを飲んでもらいました。その方が亡くなった後、息子さんから「(人生最期を迎える時に)大好きだったビールを飲むことが出来て父も幸せだったと思います。管理栄養士って、素晴らしい仕事ですね」と声を掛けてもらい、嬉しかったですね。福祉施設ならではの管理栄養士の役割を実感できました。大変ですが、やりがいがありますよ。
Q.仕事で心掛けていることはなんでしょうか。
高齢者福祉施設の管理栄養士は、1人しかいない場合が多いと思います、私もそうです。そこで入居者や介護士、看護師と調理師をつなぐ懸け橋になろうと、みんなとコミュニケーションを取りながら、気軽に話をしてもらえるような関係を作るように心掛けています。
お年寄りは遠慮して本心を言われないこともりありますが、ひな祭りなど行事があるときの特別な献立を見て「わーっ」と拍手と歓声が上がって、入居者の方が喜んでいる光景を見た時には、私はすぐに調理師にもその様子を伝えます。それが私たち管理栄養士・調理師のモチベーションにつながりますから。
小中学生のみなさん、保護者のみなさんへ
福祉施設で管理栄養士として働くには、まずお年寄りをはじめ、人が好きなこと。そして食べることが好きなこと。この2つがあれば、楽しく仕事ができる仕事だと思います。
将来、管理栄養士として福祉施設で働いてもらえると嬉しいです。